![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
東京桑野会会員からの特別メッセージ |
![]() |
|||||
|
|||||
![]() 76期 平田勝也 ![]() |
2025.04.29 愛校心とは 平田勝也(76期) 東京桑野会副会長 東京桑野会においては、現在しきりに“愛校心”が会員構成の若年層の減少と参加意識の低下と絡めて論じられています。安積高等学校は2024年9月創立140周年を迎えた県内有数の伝統校で、「開拓者精神」「質実剛健」「文武両道」の3つからなる「安積の精神」が息づいていると言われております。ただし、これらの標語は全国随所で唱えられる共通の精神で、本校だけの独自のものではなく、随時見直しや新たな価値創造の必要があります。 そして、2001年4月男女共学開始、2025年度に中高一貫校「県立安積中・高(仮称)」を開校予定となっており、建学以来大きな教育体制の変化を迎えつつあります。このような状況下で、東京桑野会の今後の在りようを考えてみました。 はじめに、愛校心とは受動的に与えられるものでも、上意下達で強制的に先輩から後輩へ押し付けるものではなく、先輩・同輩・後輩の間の絶え間ない活動や意思疎通、相互連携と互いの共同作業による連帯や共感による相互理解と信頼によって自然に育まれる歴史的産物と言えましょう。例えば、対外的なスポーツ・音楽会・学校祭・修学旅行等への自発的参加と応援活動やボランティア活動あるいは様々なクラブ活動等によって共同参加による共感と連帯等によって生み出されたものです。在校生、卒業生、教職員、在京関係者一同の共通の土俵となるものと思います。開校以来の様々の経験の蓄積が熟成され、自由闊達な議論に基づく伝統とか精神とかが形成されてきたものと思います。 ここでは、安積高等学校の歴史を左右することになる上記の男女共学開始と中高一貫校開始の重要事項を中心に、愛校心と絡めて論じようと思います。 先ずは、当校の設立にかかわる時代背景を説明致します。 江戸時代末期の日本は黒船来航などに代表されるように、欧米諸国の植民地獲得競争の一環として各国の来航が頻発し、江戸幕府と諸藩の夫々の異なる対応によって一貫して諸外国に対処する統一外交ができず、内戦となり明治維新を迎えた経緯があります。これらの世界情勢から、欧米諸国の視察及び遊学は江戸時代末期から薩摩藩・長州藩及び江戸幕府によってなされていましたが、中国のアヘン戦争による植民地化などの脅威を強く懸念した維新政府は、これを積極的かつ計画的に迅速に進めると同時に、お雇い外国人などを導入するなど、国力を急速に高めるため、直接に文物や・科学・工業・諸法規の整備を進め、廃藩置県を経て「文明開化」の流れがあり、併せて東京帝国大学の前身の大学校の整備を進め、明治三年二月に「大学規則」とともに「中小学規則」を定めました。 欧米の学校制度にならって、学校を三段階に構成「中小学規則」を定めこの中学は「専門学」を授ける学校であり、学制後の中学校とはかなり異なった性格で当時の諸藩や府県の学制改革に影響を与え、その後「中学」または「中学校」と称する学校が各地に設けられました。当時の中学校は、その地方における最高学府であり、小学校よりも程度の高い普通教育および専門教育の一部を授ける総合的な教育機関でした。そして多くはその藩や府県の教育行政の機能をももち、また教員養成機関をも兼ねていました。旧制中学校は、中学校令(明治19年勅令第15号および明治32年勅令第28号)に基づき、各道府県に少なくとも一校以上の規定で設立されました。(文部科学省) 我が校は、明治維新のこれらの学制改革の一環として設立されたもので、当初1884年(明治17年)7月12日 - 「二本松県安積中学校」を統合吸収し、「福島県福島中学校」が設置され、入学資格を小学校中等科卒業程度としました。その後種々の変遷を経て、旧制「福島県立安積中学校」となり、終戦を経て1948年(昭和23年)4月1日、学制改革(六・三・三制の実施)により、旧制中学校は廃止され、新制高等学校「福島県立安積高等学校」(男子校)が発足しました。通常制普通課程(現・全日制課程普通科)を設置し、修業年限を3年としました。更に、2001年(平成13年)4月1日男女共学を開始しました。加えて、2020年(令和2年)2月 - 福島県教育委員会は、2025年度に安積高校を中高一貫校化することにしました。(福島県立安積高等学校HP他) 以上大急ぎで、当校の設立の経緯を述べましたが、先ずは主題の男女共学開始について論考致します。 日本では第二次世界大戦まで男女別学であり、封建的な男尊女卑の考え方が一般的でした。しかし戦後のアメリカのGHQ主導で米国スタンダードな教育改革が実施され、「男女平等」の概念が反映されるようになります。 GHQは「女性にも高等教育を受けさせるべきだ」と主張し、これを受けて教育使節団が派遣され、学校教育における男女の教育の機会均等と共学を推進する改革が進められました。 そして1947年には日本で初めての学習指導要領が発表され、教科ごとで小学校から高校までを通した教科の目的・内容などが記載されていました。 更に時代は進み、全国で高校も男女共学の波が起こり、次第に従来の男女別学の流れが変わり始めました。 福島県においても、2000年台前半までに県下公立高等学校の「男女共学化」が進められました。その際の各校では賛否両論が多く発生しました。特に旧制中学校、旧制高等女学校ではこの論争が頻発しました。全国的に、公立高校では新しい制度が進められていますが、私立高校では必ずしも進められてはおりません。 ここでは、まず共学の利点と欠点について述べます。「共学校のメリット・デメリットは?男女別学との違いを解説!」(塾選)引用 〔利点〕 @ 男女がお互いに、いい影響を与え合い、実社会に近い環境とします。 A 多様な価値観に触れる機会が多く、切磋琢磨し合える環境です。 B 社会に出てからの適応性を身につけることができます。 C 異性が近くにいる環境で得られる経験が沢山あり、「楽しかった!」という感想を聞くことができます。 〔欠点〕 @ 男女の特性に応じた授業を展開しづらい。 A 異性の目が気になり、窮屈さを感じる。 B 学業面が疎かになることも…。 C 先入観が邪魔をして、選択肢を狭めてしまう。 男女共学の利欠点や同別学の利欠点については様々の主張や比較検討がなされており、夫々に論拠に頷ける点や必ずしも納得できない点がありますが、少なくともこの制度は既に決定事項として進行していることに留意する必要があります。私も当初は、男子生徒の専有率が下がり必ずしも学業にこだわらない多種多様な優れた資質を持つ生徒の採用が難しくなり、郡山市周辺の特色ある地域性が薄れ、歴史や伝統の継続が難しくなるのではないかと危惧しました。 ただし、母校を訪ねると、女子生徒が礼儀正しく先輩に礼をしたり、東京桑野会総会でバンカラ風の元気のよい女子卒業生の挨拶を見ると、ある種の頼もしさもあり、改めて共学の意義を考える必要性を感じざるを得ない局面に立ちます。 これらのことから、既に進行中の男女共学の現実を踏まえて改めて利欠点を掘り下げて、新安積高等学校の新たな進路を模索し存立理念を確立する必要を感じます。これは学校当局や現役生徒や卒業生も含めて、今後の安積高等学校のあるべき姿や具体的な教育方針・各種クラブ活動校歌・応援歌等について率直な議論・討論・投稿等を進めるべきと考えます。もはや、在学生徒の四十数%を越える女生徒の存在を抜きにした議論はあり得ず、安積高等学校のあるべき姿を模索すべき根本的な問題となっております。 次に、中高一貫校は本年より開始されますが、そもそも何故このような学制が必要とされたのかを考えなければなりません。 中高一貫教育制度は,「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」(平成9年6月中央教育審議会第2次答申)においてその基本的な考え方や制度の骨格が示されました。 平成9年答申においては、中高一貫教育が,私立の中・高等学校を中心に、実際上相当の広がりを持って行われていた現状も踏まえ、心身の成長や変化の著しい多感な時期にある中等教育において、一人一人の能力・適性に応じた教育を進めるため、中学校教育と高等学校教育を6年間一貫して行うことについて、大きな幾つかの利点を持つ中高一貫教育を享受する機会を、子どもたちにより広く提供すべく、中高一貫教育を導入することが適当であるとしました。一方で、中高一貫ではない中学校・高等学校の利点や意義も確認し、その上で、子どもたちや保護者の選択の幅を広げる観点、さらには,地方公共団体や学校法人などの学校設置者が自らの創意工夫によって特色ある教育を展開する観点から、その中等教育における選択肢としての意義を提言しました。 この平成9年答申における提言を踏まえ、学校制度の複線化構造を進める観点から、中学校と高等学校の6年間を接続し,6年間の学校生活の中で計画的・継続的な教育課程を展開することにより、生徒の個性や創造性を伸ばすことを目的として、中高一貫教育制度が平成11年度から選択的に導入されました。(文部科学省) このような国の方針を受け、福島県においても中高一貫教育の導入方針を固め、既に会津学鳳高等学校 (平成19年度)・ふたば未来学園高等学校(平成31年度(令和元年度))が誕生致しました。 設立理念は国の方針に準じるもので、福島県教育委員会では、2020年2月に策定した「中高一貫教育後期実施計画」に基づき、既設高に続き新たな中高一貫教育校を安積高等学校に併設型で設置します。基本計画では、学校の概要や教育内容、開校に向けた教育内容等準備計画、施設整備計画についてまとめています。 学校名は福島県立安積中学校・高等学校(仮称)。開校(予定)年度は2025年度。設置課程・学科は全日制普通科。生徒募集定員は中学校60名。通学区域は県下一円。スーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業における課題研究を軸とした産学官連携、地域との共創等を特色とする取組みや、文化活動を尊ぶ郡山市の立地を生かした教育内容とします。また、教育の柱として、STEAM教育の推進を掲げ、創造性、表現力、課題解決力等を育成するものとしました。 これとは別に、少子高齢化の進展と共に就学生徒が減少し、県内でも学校の集約化による統廃合が進行中で、教育界の再編成が行われて学校の絶対数が縮小しつつあり、これらの動きと今回の改革とは謂わばスクラップアンドビルドのような一連の動きと関連がありそうで複雑微妙な心境です。 既に、この春開校する県立安積中学校など、3つの県立中学校の入学試験が行なわれました。 2025年4月に安積高校に併設され、中高一貫校として開校する郡山市の県立安積中学校には、定員60人に対して307人が志願し、倍率は5.12倍となりました。 県立中学校の入学試験は11日、“会津学鳳中”と“ふたば未来学園中”でも行われました。 3つの県立中学校の合格者は、21日に発表されます。(福島中央テレビ) このような状況下で、中高一貫校制度が始動し、もはや制度の是非や長短所の有無を論じる段階ではなく、如何に新制度を軌道に乗せ内容を充実させる段階となっておりますが、男女共学化と併せ、私達が学んだ安積高等学校は革命的変貌を遂げ、全く別の高校に脱皮しようとしております。ただし、安積中学校には小学生が受験し、まだ海のものとも山のものとも知れぬ段階で、隠れた才能が開花する前に、偏差値を主眼に選抜し、郡山市の地域特性とは関連の薄い生徒が集まる可能性もあり、解決すべき制度となっております。 そもそも、創学時の旧制安積中学は福島県で唯一の全県下から進学する学校で、多くの国内の錚々たる人材を輩出した歴史があり、謂ってみれば先祖帰りの感もあります。当校の立地条件は、当時の時代背景を基に、県央に位置し交通の要衝で物流の中核基地を担ったこと、安積疎水開通で農業基盤が整い安定した食料供給体制が整ったこと、全国から多種多様の玉石混交の意欲ある人材が流入したこと等をもとに、建学の精神に溢れる有学の志が集い談論風発の活発な学生を世に送り出しました。 このように誇るべき歴史を連綿と受け継いできてはいるのですが、旧制中学の伝統を引く学校像だけでは対応できない段階となっており、新しい体制に応じた安積桑野会・東京桑野会他の在りようを模索する時期に至っております。本題の愛校心とはこのような現況を踏まえた探求にすべきもので、最初に述べた、「先輩・同輩・後輩の間の絶え間ない活動や意思疎通、相互連携と互いの共同作業による連帯や共感による相互理解と信頼によって自然に育まれる歴史的産物と言えましょう。」との丁寧で緊密な作業の積み重ねによって醸成されるものと考えます。 最後に、以上の考究すべき思索には、英国・仏国・独国・米国・中国等の明治日本が範とした当時の先進国の教育制度の検証や再発見も必要です。私は、個人的には、英国のオックスフォード・ケンブリッジ大学等への著名な進学校のパブリックスクールの厳しくもおおらかな教育方針・校風が理想的で、ジェームズ・ヒルトンが1934年に発表したイギリスの小説で、「チップス先生さようなら」に描かれる自由な空気と歴史とが眩しく見えます。 ※) 本稿は、東京桑野会会報No.47号に寄稿された文書を転載したものです。 |
||||
前頁に 戻 る |
![]() |
||||
![]() |