
| 安積桑野会会員からの特別メッセージ | |||||
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![]() 97期 森合秀樹 |
2026.03.20 「夢を持ち続ける」ことが、人生とロケットの推進力に 森合 秀樹(97期) 金沢工業大学工学部航空宇宙工学科 教授 -----会報No.48号より転載----- 私が宇宙に強く惹かれるようになったのは、小学生の頃のことでした。夜、天体望遠鏡をのぞき込み、満天の星空を見上げながら、「いつか、あの世界へ行けたら」と夢見ていたことを昨夜のことのように、今でもよく覚えております。なぜならその思いは形を変えながらも、今日まで消えることなく続いているからです。 私の価値観や行動の原点である「夢を持ち続ける」ことができたのは、安積高校における貴重な3年間の経験が大きいと思います。高校時代、私は柔道部に所属して三年生では主将を任されましたが、一つ下の学年は全員が退部し、部の存続すら危ぶまれる状況となりました。それでも三年生で引退後、入試本番直前の12月まで道場に通い、一年生と向き合い続けました。人を育てることの難しさと、関わり続けることの大切さを、このとき初めて実感しました。また、一年生の応援歌練習は、今で言えばしごきやハラスメントと受け取られかねない厳しい指導でしたが、人としての強さと柔軟性を育てる──それも安積で学んだ大切なことでした。もちろん、部の顧問や担任を初めとした安積の熱心かつ個性豊かな先生方からは、人としてのありかたを含め、様々なことを学びました。 安積高校を卒業後、私は国立大学に進学しましたが、当時在籍したヨット部の活動にかまけて成績が今一つだったこともあり、「原子力ロケットの研究ができるかもしれない」と原子力工学を専攻しました。そして就職面接では、無謀にも「隣のアルファ・ケンタウリ太陽系へ行くエンジンを開発したい」と訴え、それでも寛容にも内定をくれた大手重工メーカーに入社しました。以来30年以上、H2/H2Aロケット用をはじめとしたロケットエンジン、大型民間航空機や防衛用ヘリコプター・ミサイル向けの航空エンジンの開発・設計に携わることになります。会社人生を通じて設計部門で実機ハードウエアの成立性を追求する立場にありましたが、一方で幸運にも、国内外の大学院で勉学や共同研究の機会を得て、「夢を漠然と意識しつつ」基礎研究にも取り組むことができました。 重工メーカーの開発設計の仕事にはやりがいがありましたが、実機ビジネスという枠組みの中で、年齢とともに挑戦の限界を感じるようにもなりました。そこで立ち返ったのが、幼い頃からの宇宙への憧れ、そして人類未踏の隣のアルファ・ケンタウリ太陽系を目指すという「持ち続けてきた」夢でした。そして数年前に大学に移籍し、以来大学教員として、若い学生らとともに研究を続けております。 隣の恒星系とはいえ、距離は4.3光年。途方もない挑戦です。しかし、「不可能そうだからやらない」のではなく、「どうすれば可能になるのかを考え続け、少しでも前へ進む」ことが研究の醍醐味です。ライフワークとしてはもちろん、世代や国を超えた人類の目標としても、これ以上ないほど魅力的なテーマだと考えております。 若い人にはぜひ自分なりの夢を持ち続けてほしいと思います。最初は希望の仕事を任されなかったり、上司や客先の理不尽さに直面したりすることもあると思いますが、どんな仕事でも前向きに行えば学ぶことは多く、必ず後で役立つと思います。また、私が実感するのは、自分にとって人生で最も幸運だったことは、驚くことに、最悪と思った仕事や配置転換、あるいは人との出会いだったということです。それらが自分でも思っていなかった可能性を引き出し、結果として幸福や夢につながってきたのだと感じています。例えば、意に反して宇宙部門から航空部門へ異動したことが、異なる価値観や海外駐在の経験等、視野の拡大につながり、意に反して駐在先から帰国を命じられたことが、大学共同研究と学位取得、今の仕事につながったことでしょうか。一方で、いざとなれば仕事は変えればすみますが、家族は人生でただ一つの存在。かけがえのないものです。夢に向かって進むときほど、家族を何よりも大切にし、苦楽を分かち合いながら歩みを止めずに前へ進みたいものですね。 最後に、今改めて振り返ってみると、安積で学び「夢を持ち続ける」ことが推進力となって、自分自身を前へ押し出し、光り輝かせてくれたのだと感じます。そして素晴らしい家族や仲間に囲まれながら夢を目指す、これ以上にない幸せな人生につながったのではないかと思います。しかし、まだ私の人生は終わっていません。この推進力を、遥かな宇宙を目指すロケットの巨大な推進力へ、命ある限りつなげたいと思います。皆さんがそれぞれの「夢を持ち続け」、次の時代を切り拓いていかれることを心から願っております。 |
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